死のフーガ

VIPPERな俺 : お前らが生涯で最も面白いと思った小説書いてけ、買うから
ティーブン・ハンターが二回ほどあがっておりますが、僕はハンター作品のなかでは最初に読んだ「魔弾」の印象が強いです。
原題はザ・マスタースナイパーなのですが、日本人は優れた狙撃手に「魔弾の射手」の異名を与えるのが好きですよね。
例に漏れず、この作品もナチス・ドイツ武装SS大佐のスナイパーが中心人物として描かれています(主人公は彼を追うアメリカのOSS=戦略事務局、CIAの前身組織の人間です)。
スナイパーが東部戦線でたったひとりでソ連軍の進撃を頓挫させる神業的な連続狙撃シーンもいいのですが、この作品で印象的なのは冒頭で引用され、作品にも大きな影響を与えているパウル・ツェランの詩「死のフーガ」の一節でしょう。


僕はこの引用から興味を持って死のフーガを読んでみたのですが(ドイツ語は読めんので邦訳版で、ですが)、
そのあまりの絶望と狂気から、いまだに記憶に残っています。
作者のツェランナチス・ドイツ強制収容所によりすべてを失い、戦後の1970年にセーヌ川で入水自殺をしてこの世を去ったというエピソードともあわせて、凄い衝撃を受けました。