本にはその本自身の運命がある

ヒトラーの秘密図書館

ヒトラーの秘密図書館

万を超える数を誇っていたヒトラーの蔵書は、大半が戦争の混乱のなか世界中に散逸していったそうです。
そのうち米議会図書館に保存されていたヒトラーの蔵書を中心に、1300冊を分析調査した本。
著者はヴァルター・ベンヤミンの言葉「収集者の中に書物が生きているのではない。収集者のほうが書物の中に生きているのだ」を冒頭に引用し、本の内容そのものだけでなく、余白の書き込みやアンダーラインからヒトラー第三帝国の精神形成を調べあげています。
ユダヤ人絶滅計画の原点マディソン・グラント『偉大な人種の消滅』、ヴァチカンのナチス分断工作の書アロイス・フーダル『国家社会主義の基礎』、将軍よりも重きを置いた軍事年鑑フーゴ・ロクス『シュリーフェン』……。
感情的で残忍な狂気の煽動家というイメージが強いヒトラーですが、その実、学歴コンプレックスに苛まれるある種のビブリオマニアであった一面を窺い知ることができます。


本をせっせと大量に「読んでいる」輩がいるが、彼らは「本をよく読んでいる」とは言えない。
とは『わが闘争』におけるヒトラーの言葉だそうですが、さもありなん。